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東京高等裁判所 昭和56年(行ス)27号 決定

抗告人 甲野太郎

主文

本件抗告を棄却する。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙のとおりである。

二  しかし、当裁判所もまた抗告人の本件訴訟救助申立を失当と判断するものであって、その理由は原決定理由一記載のとおりであるから、これを引用する。

なお、当裁判所として、次のように附加する。

訴訟救助の申立が、申立人に訴訟費用を支払う資力がないとはいえないとの理由により却下され、その裁判が確定した場合において、同一審級において再度右資力がないことを主張訴訟救助の申立をすることが全く許されないではないとしても、少なくとも、従前の救助申立に対する裁判において、納付を要することが確実なものとして直接に検討の対象となったと認められる事項については、後の訴訟救助申立においては確定したものとして取り扱うべきである。本件についてこれをみるに、原決定の指摘する本件従前の訴訟救助申立は、本件本案訴訟の提起とともになされたが、その裁判(即時抗告を経て確定)においては、少なくとも、訴え提起の手数料については、それが通常最も大口の裁判費用であって、訴訟手続の頭初において先ず納めるべき確定金額で算出することができる費目として、当然のことながら、これが支払に対する抗告人の資力が具体的に検討の対象とされたものといわなければならない。そうすると、少なくとも、右訴え提起の手数料については、右従前の救助申立に係る裁判の確定に伴い、当時抗告人においてこれを支払う資力がなかったものとはいえないことは、すでに確定しているものと解すべきである。

また、本件訴訟において、裁判所に納めるその他の費用は、現段階において特に多額にわたるものがあることが明らかに予想されるとはいえないので、抗告人が在監者であることを考慮しても、一件記録に表れた差入れ額等からすれば、抗告人にこれを支払う資力がないことの疎明があるということはできない。

三  よって、本件再度の訴訟救助申立を却下した原決定は相当であり、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井口牧郎 裁判官 内田恒久 藤浦照生)

〈以下省略〉

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